クリオピリン周期性発熱症候群と、その他の明らかにされている自己炎症性周期性発熱症候群について
クリオピリン 関連周期性症候群(CAPS) |
その他の明らかにされている 自己炎症性周期性発熱症候群 |
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CINCA 症候群 | Muckle-Wells 症候群 (MWS) | 家族性寒冷 蕁麻疹 (FCU) | 家族性 地中海熱 (FMF) | TNF受容体 関連周期性 症候群 (TRAPS) | 高Ig D 症候群 (HIDS) | |
遺伝子 および 遺伝様式 |
CIAS1/NLRP3/ NALP3/PYPAF1 常染色体優性自然変異 家族性であることはほとんどない。 |
CIAS1/NLRP3/ NALP3/PYPAF1 常染色体優性自然変異 一部に家族性が認められる。 |
CIAS1/NLRP3/ NALP3/PYPAF1 常染色体優性 多くが家族性であり、一部に自然変異が認められる。 |
MEFV 常染色体劣性 最も多くみられる遺伝性周期性発熱症候群。 |
TNFRSF1A 常染色体優性自然変異 一部に家族性が認められる。 |
MVK 常染色体劣性 |
人種差 | あらゆる人種にみられる。 | あらゆる人種にみられるが、ヨーロッパ人に多い。 | あらゆる人種にみられるが、大半がヨーロッパ人である。 | トルコ人、 アルメニア人、 ユダヤ人、 セファルディ系ユダヤ人、 イタリア人 |
多様な人種にみられる。 | ほとんどが オランダ人 または 北欧人 |
世界的 にみた 変異の 頻度 |
100万人にひとりの割合であり、おそらく世界中に6,500例超存在するものと考えられる。 | 100万人にひとりの割合であり、一部に家族性が認められたことから、CINCA症候群より多いものと考えられる。 | 100万人にひとりの割合またはそれ以上。アメリカでは300例超が診断されており、ほとんどが家族性である。 | この病気に罹っている人種(上欄参照のこと)のなかで、5~7人にひとりの割合で劣性遺伝子が認められる。 | 明らかにされていないが、世界中で100例超が診断されている。 | 明らかにされていないが、現在のところ200例超が高Ig D症候群(HIDS)に登録されている(www. hids.net参照のこと)。 |
症状または 発作(フレア) の持続期間 |
持続性であり、フレア、発熱または炎症の間、症状が悪化する。 | 2~3日持続することが多く、一部の患者では、偶発的に発現する。低温によってフレアが誘発される。 | 低温ないし冷温に曝されると1~3時間後に発現し、12~24時持続する。 | 12~72時間 | 最長数週間。 フレアの平均持続期間は3週間。 | 3~7日間であり、2~12週間おきに再発を繰り返す。 |
発症年齢 | 新生児期/乳児期。出生時に、発疹、症状、検査値の異常が認められることが多い。 | 乳児期であるが、幼少期または思春期での発現例が少数ある。 | 乳児期であり、低温ないし冷温に曝されると発症する。 | 乳児期 | 大半が、3歳までに初回発作を発現し、ほぼ全例が20歳までに発現する。中年期以降での発現例が少数ながらある。 | 乳児期 |
皮膚/ 皮膚反応 |
表皮内汗管の好中球の増大とともに、蕁麻疹様発疹が絶えず認められる。フレア時に発疹が増強する。 | 表皮内汗管の好中球の増大とともに蕁麻疹様発疹が認められる。ほぼ毎日、発疹がみられ、フレア時に増強する。 | 低温が、表皮内汗管の好中球の増大とともに、蕁麻疹様発疹を引き起こす。毎日発疹がみられることもある。 | 膝下領域に、丹毒様紅斑がみられ、症状のフレアの間、2~3日間持続する。 | 移動性の発疹が、発疹領域下の深在性組織の痛みとともにみられる。四肢や身体の発疹がみられた領域に重度の痛みが発現する。 | びまん性の丘疹発疹や蕁麻疹が認められる。一部に点状出血または紫斑がみられる。 |
神経学的 所見 |
頭痛、発熱、慢性無菌性髄膜炎がみられ、中枢神経系の圧力が高い。多くに、精神的障害や認知面での障害、乳頭浮腫がみられる。 | 発熱、フレアとともに頭痛がみられることがある。このほかの中枢神経系の症状が多く認められることはめったにない。 | 低温に曝されると、発熱とともに頭痛がみられることがある。現時点では中枢神経系への著明な作用があるかどうかは明らかにされていない。 | 発熱がみられる。フレアがみられる間、急性無菌性髄膜炎がまれではあるが認められることもある。ただし慢性ではない。 | フレア時に、38℃超の発熱が3日超持続する。症状のフレア時に、頭痛を呈することがある。 | 症状のフレア時に、頭痛や発熱がみられる。 |
聴覚 | 多くに、乳児期/幼少期から感音性難聴の悪化が認められる。 | 多くに、思春期から感音性難聴の悪化が認められる。 | 一部の患者に軽度の聴覚障害がみられるが、クリオピリン周期性発熱症候群(CAPS)の炎症によるものかどうかは、現在のところ明らかにされていない。 | まれであり、家族性地中海熱(FMF)によるものとは考えられていない。 | まれであり、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)によるものであるとは考えられていない。 | まれであり、高Ig D症候群(HIDS)によるものであるとは考えられていない。 |
眼 | 乳頭浮腫、ぶどう膜炎、 虹彩炎、結膜炎がみられる。角膜混濁や視力喪失を呈することもある。 | フレアの間、結膜炎 (非感染性)、上強膜炎がみられ、角膜混濁を呈することもある。 | 低温への曝露により引き起こされたフレアの間、結膜炎 (非感染性)がみられる。 | きわめてまれであるか、 まれである | フレアの間、結膜炎や眼窩周囲浮腫がみられる。 | まれである。 |
胸膜 | 心膜液貯留や心膜炎が認められる症例がある。 | まれである。 | 観察されていない。 | フレア時に、45% に強膜炎、呼吸時疼痛がみられる。心膜炎が一部に認められる。 | 多くみられる。 | まれである。 |
腹部 | フレア時に、嘔気や嘔吐または中枢神経系の圧力の上昇が認められる。 | フレア時に、一部に腹痛がみられる。 | まれである。 | フレア時に、無菌性腹膜炎、痛みや便秘がみられる | フレア時に、腹膜炎、 下痢や便秘がみられる。 | フレア時に、強度の痛み、嘔吐や下痢がみられる。 |
リンパ | 一部の患者に、肝臓肥大や脾臓肥大がみられ、多くにリンパ節腫大が認められる。 | めったに認められない。 | 認められない。 | 脾臓肥大がよくみられ、一部にリンパ節腫大が認められる。 | 脾臓肥大がよくみられ、一部にリンパ節腫大が認められる。 | 小児には、頸部リンパ節腫大がみられることが多い。 |
関節/ 骨筋肉 および軟骨 |
関節痛、外反膝または内反膝が認められる。一部の患者には、前頭隆起、鞍鼻、拘縮、ばち状指がみられ、50%未満の患者の膝に骨の過成長が認められる。 | フレア時に、痛みや関節痛を呈することが多い。 | フレア時に関節痛や硬直を呈する。 | 単関節炎/多発性関節炎、少数関節炎やばち状指が認められることが多い。足首部関節痛がみられることが多い。腰または足首部の重篤な関節炎がみられるのはまれである。 | 大関節に、筋肉の痛みや腫脹とともに、間欠性または慢性の関節炎がみられる。 | 関節痛が多くみられ、対称性多発性関節炎が高頻度に認められる。 |
血管炎 | 血管炎を呈することはまれである。 | 認められない。 | 認められない。 | ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP: Henoch-Schoenlein Purpura、日本ではアレルギー性紫斑病ともいう)、結節性多発性動脈炎がみられる。 | ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、リンパ球性血管炎がみられる。 | 皮膚血管炎が多くみられ、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病がみられるのはまれである。 |
アミロイ ドーシス |
2%未満の患者に、血清アミロイドA(SAA)タンパクの上昇によるアミロイドーシスが認められる。 | 25%超の患者に、血清アミロイドAタンパクの上昇が認められ、25%超の患者にアミロイドーシスがみられる。 | 一部の患者には、血清アミロイドAタンパクの上昇によるアミロイドーシスがみられる。 | 未治療の患者に多くみられ、遺伝子型による。 | 頻度は10%超であるが、システインの変異によりリスクが上昇する。 | まれである。 |
異常が 認められる 検査値 |
赤血球沈降速度(ESR)、C反応性タンパク(CRP)、血清アミロイドAタンパクが慢性的に高値を示し、貧血、白血球増加症が認められる。 | 赤血球沈降速度、C反応性タンパク、血清アミロイドAタンパクが高値を示す。フレア時に、白血球増加症、高ガンマグロブリン血症がみられる。 | 赤血球沈降速度、C反応性タンパク、血清アミロイドAタンパクが高値を示す。フレア時に、白血球増加症がみられる。 | フレア時に、急性期反応物質が高値を示す。フレア時に、フィブリノーゲン濃度の上昇、白血球増加症が認められる。 | 赤血球沈降速度、C反応性タンパク、血清アミロイドAタンパクが高値を示す。多形核好中球(PMN)が増大し、多クローン性高ガンマグロブリン血症、白血球増加症が認められる。 | 患者の80%にIg Aの上昇を伴うIg D高値が認められる。メバロン酸尿症 がみられる。急性期反応物質が高値を示す。 |